前の仕事の心残り。
ちょっと前の仕事のことを。
私は前職、都内出版社に勤務する編集者でした。
天職かと思えたし、今もたくさんの人に読み続けられている「我が子」を書店やネットで見るにつけ、本当にいい仕事をさせてもらえたと感謝の気持ちでいっぱいになる。
しかし、心残りもある。
それは別の編集者に引き継いだ仕事のこと。
自分が続けていたら、きっと長く読まれる作品になると自信を持って言えるし、その本を最後まで手がけられなかったことは申し訳なく、そして寂しい思いでいっぱいだった。だからこそ、自分で手がける以上に素晴らしい作品にして、この世に送り出して欲しいと思っていた。
しかし、引き継いだ仕事のほとんどが、数年経ったいまでも世の中に出ていない。
もちろん、引き継いだ人にも担当作品があったし、そこへプラスする形で自分が途中まで手がけていた作品を引き継いでもらうのは、相当な負担になるだろう。
それでも、引き継いだからには、この世に送り出して欲しいと思うのは、元編集者としての偽らざる本音。
なにより、担当作家さん、担当画家、担当デザイナー、担当翻訳者...全ての人に申し訳なく悲しくなる。
自分が「これ、出しましょう」と声をかけ、また「みなみさんと一緒に仕事したいです」と自分に声をかけてくれたたくさんの人たちの気持ちを思って胸が苦しくなっている。
私が会社に残り続けていたら、ぜったいもっと早く完成させたのに...と思ってしまって仕方がない。
どのくらい先になるのかわからないけれど、きっといつか一読者として楽しめる日が来ることを、心から願っている。